第13章 summer memory⑧
りおの表情が、コロコロと変わる。
目が合ってドキッとして、
俺の首元で光るネックレスを見て、
少し考えて、
そして目をそらして、
意を決して、
俺を見つめて、
そしてはにかんだ笑顔を見せた。
「すっごく似合ってる!ありがとう!」
その、突然に咲いた笑顔は俺の思考を停止させるには十分すぎた。
(何で・・・いきなり女の子らしいこと言うの・・・)
りおが本当の意味で優しいことは知ってるけど、普段は意地張ってあまり見せてくれないのに・・・
俺のためにプレゼントを買って、
ケーキを作って、
キャンドル用意して・・・そんな事されたら喜ばずにはいれないじゃん。
柄になく照れちゃいそうになる。
俺はそれを隠すようにりおの手の中にあるケーキをひょいと取り上げた。
「・・・・・・・・・?」
不思議そうに俺を見つめるりお。そんなりおの顔の前に、ケーキをずいっと差し出す。
「??何?」
「これ、俺のバースデーケーキ、でしょ?」
「うん」
「今食べたい」
するとりおはあっと、声を漏らした。
「じゃあお皿とフォーク、あっちにあるから取ってくるよ」
「いや、いい」
ベンチに置いてあるカバンの中に入ってんのか、そこへ行こうとしたりおを声で制した。そしていいことを閃いてニヤリと口角を上げる。
「りおが食べさせてよ」
「・・・・・・・・・・・・どうやって?」
結構間があったな。
「手に決まってんじゃん」
「ええっ!?」
「俺のために作ってくれたんでしょ?だったらりおがあーんしてくんないと誕生日感でないよ」
「100歩譲って食べさせるのはいいけど、手で?!」
「そうだよ。ほら、俺早く食べたい。その花って食べれんの?」
そうしてケーキの上に散りばめられた彩豊かな花びらのことを指す。何かさ、ほんと、こういうもの作る所は女の子らしいよね。
「食べ・・・れるけど・・・」
「ん。じゃあ花から食べさせてよ」
りおは恥ずかしそうに目を伏せた後、俺の手の中のケーキから花びらをそっと摘んだ。