第13章 summer memory⑧
「用意したのは、ケーキだけじゃないの」
りおはケーキを落とさないように片手で器用に持って、もう片方の手首に掛けていた紙袋を、俺に渡してくれた。
「開けて、・・・い?」
こくんと頷くりお。俺はその紙袋から、更にラッピングを施された品を開ける。やばい、内心すっごいわくわくしてる。
クリスマスの日にサンタからのプレゼントを開ける時と同じ気持ちだった。
「大したものじゃないし、全然、女の子が選ぶようなものでも無いかもしんないけど・・・」
りおはもじもじと顔を俯かせた。
くれるだけでも、嬉しいなんて絶対言えないな。
俺は急く気持ちを抑えながらラッピングを外し中身を取り出した・・・
「・・・スポーツネックレス?」
「うん、中に磁気が入ってて、肩こりとかにもいいらしいよ。デザインが素敵だなぁって思って・・・」
りおがくれたものは、スポーツ選手がよく付けているチタンネックレスだった。独特の黒のナイロンのような紐に、トップスは銀色の小さなひし形のチャームがついている。
「及川さん、意外とピアスとか開いてないし、ネックレスとか付けてないし・・・これだったらちょっとは遊び人感がマシになるかなぁって思って・・・」
「ちょっと、disりしか入ってないような気がするんですけど!?」
「でも、及川さんに似合うかなーって思って」
その言葉に、俺のことを色々考えてプレゼントを選ぶりおの事を想像する。そうするだけで、心が温かい気持ちになる。
ふと、りおを背後から照らすキャンドルに目をやると、ちゃんとHAPPY BIRTHDAYの文字になるように並べられている。
俺のためにこんな事までしてくれたりお・・・、
照れくさそうな顔を見つめ、俺は黙ってそのネックレスをりおの前で付けて見せた。
「んー、結構似合ってんじゃない?」
「・・・・・・・・・・・・」
「ま、俺って何でも似合っちゃうから仕方ないよねー」
うん、ネックレス自体も軽いし気にならない。デザインもいい感じ。
「なーにぼうっとしてんの?あ、もしかして似合いすぎて惚れちゃったとか?」
放心した様子で俺を見るりおの顔を覗き込むと、そこで視線が交わる。