第13章 summer memory⑧
・・・もう。
「わかった。わ〜かったから、見ないから。このまま待ってたらいいんでしょ」
「ほんと?1ミリも見ないでね?」
「りおが脱いでるなら話は別」
「馬鹿」
りおは俺の隣を過ぎて、またカチャカチャと何か作業をし始めた。
俺は後ろを向いてるから、りおが何してるのかは全然わかんないんだけど、チャッカマンらしきもので火をつけているらしく、その火の灯りが地面を照らし出す。
「ねぇ、まだー?」
「もうちょっと、もうちょっとで全部着くから!」
沢山火をつけているのか、地面を照らす光が強まる。
そして、夏だし、火、近いし暑い。
折角シャワー浴びてきたのに、またじっとりと汗をかき始めたけれど、それでも嫌な気にならないのは、なんだかんだこの子が企んでることに期待してるからなんだろうな。
「できたっ!でも、もうちょっと待って!」
今度はパタパタと響く足音。何かを持つ動作の音・・・
「・・・いいよっ、こっち向いて!!」
やれやれ、と思いながら俺は振り向いた・・・
パァァーーン!!
「お誕生日おめでとう!!」
突然の音と目の前で浴びるクラッカーの色とりどりな紙吹雪。
そしてりおの声・・・
「へ?」
紙吹雪の視界の先には、ケーキを持ったりおが立っていて、その後ろで幾つものキャンドルの火が灯っていた。
「俺に?え、俺今日、誕生日じゃないけど?」
「知ってる。及川さんの誕生日過ぎてたこと、最近知ったの。お祝い出来なくて、ごめんね?だから少しでも喜ばせたくて・・・サプライズです!」
と、HAPPY BIRTHDAY OIKAWA-SANと書かれたケーキ(花がいっぱい乗ってる!)を俺の前に差し出してくれた。・・・こういう時でも、俺のことは苗字だし、さん付けなんだね。
俺に・・・?待って、え、俺に?
「俺に・・・くれんの?」
心の中でぐるぐると渦巻く疑問や興奮を言葉にする。
すると、りおは珍しく素直な笑顔でこくんと頷いた。
あぁ、朝早くから作ってたの、これだったんだ・・・
ハートの形のスポンジに、たっぷりとクリームが塗られてあって、その上にはフルーツと、これ、食用フラワーなのかな?色鮮やかな花が沢山乗っている。
一体どれくらい前から準備してたんだろう・・・