第12章 summer memory⑦
監督の話を聞き終え、シューズを鳴らした高校生が並んで挨拶に来た。
「あざしたーっ!!!」
礼儀正しく頭を下げて、顔を上げた時の高校生の顔は爽やかで、3日間の充実さが滲み出ていた。
そして、何より及川さんを見る目がみんな憧れの眼差しに溢れている。
及川さんは、ふっと口角を上げた。
目付きが、目の色が・・・変わる。
「お疲れ様。確か出発するのは明日だったよね?」
「はいっ!」
「そう。なら、もう個々のスキルが今から伸びることなんて無い。このチームは、全国に名を連ねるチームに比べて平均身長も高いわけじゃない。絶対的なエースがいる訳じゃない。だけど、これだけは忘れないで欲しい・・・」
すぅっと息を吸って、迷いなく口にする。
「バレーは、6人で強い方が強い。
青城バレー部創立初のインターハイ・・・俺たちが高校生の時に見られなかったあの景色を、楽しんできてね」
プロ選手としてではなく、1人の卒業生としての言葉・・・
岩泉さんや国見くんの目を見ればそれに共感するように頷く。
嘘や偽りは一切なく、高校生たちにも響いたんだろう。
あぁ、仲間っていいな、
青春って・・・、
スポーツっていいな・・・
「あざしたー!!!」
そうして3日間に渡る練習のお手伝いは、
幕を閉じたのだったーーー・・・