第12章 summer memory⑦
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ピーッと終わりのホイッスルが体育館に響き渡る。
「ありがとうございましたー!!!」
相変わらず高校生の声は気持ちよくて、上から見学している私は自然と拍手していた。
今日のAB戦で、及川さんは昨日言ってた通り、サーブの威力を上げて打っていた。それに必死に食らいついて上げる高校生。金曜日は触ることすらできなかった子も、三日目にして上に上げて、そこから攻撃できるようになっていた。目に見える成長だった。
(凄いなぁ、ほんと・・・・・・ん?)
ちょいちょい、と及川さんが下で手招きしている。
そっか、余韻に浸ってる場合じゃないよね。降りなくちゃ。
カバンを持ち直して、パイプ椅子を持って行く。
いつもの階段をおりるタイミングで高校生が代わってくれる。
体育館へ足を踏み入れて、高校生が監督の話を聞いている間に、及川さん、岩泉さん、国見くんに声をかける。
「3日間お疲れ様!やっぱりOBの力ってすごいねー!」
「何呑気なこといってんの。北村さんだってずっとあの暑いギャラリーで座ってたんだし、お疲れ様でしょ」
「私はただ座って見てただけだよ」
そう返すと国見くんは苦笑する。
「こっちこそ、俺たちの後輩に差し入れしてくれたり、及川の面倒もみてくれて色々ありがとうな」
岩泉さんが私を見下ろす。もうこの鋭い目も怖くない。
及川さんの件で、岩泉さんがとてもいい人だってことは知ってるから。
「ふふ・・・大きな子供がいるみたいですけど、これからも上手くやっていきます」
「誰が大きな子供だよ!ほんっと失礼だよね!」
岩泉さんの後ろで腕を組んで眉毛を釣り上げている大きな子供・・・もとい及川さん。
「・・・そういうところじゃないですか、及川さん」
「ぷっ、そうそうっ」
「カッチン!もう許してやんないから!りお、そこで構えなよ、サーブの的にする!」
ボールを取り出す及川さん。慌てて岩泉さんの後ろに隠れる。
「クソ川、しょうもないことやめとけ」
岩泉さんの低い声が及川さんを制する。
「し、しょうもないことって・・・俺の味方って誰もいないじゃんっ」
がっくしと肩を落とす及川さん、そんな彼に・・・
「整列ーーー、ありがとうございました!」