第12章 summer memory⑦
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明くる日は、午後から。
午前練習に行った及川さんは一度帰宅し、ご飯を食べてから私と一緒に青城へ向かった。
世間は真夏と言われる時期で、見ている私だって汗をかく。今日も多めのタオルと水分をカバンに詰めて、及川さんの車に乗せてもらった。
そして、練習が終わって帰っている道中、私は助手席から及川さんの顔をちらりと見た。
「なに?覗き見1回5000円取りますけどー?」
「・・・ぼったくり」
「なんか言いたいことあんなら聞くけど」
信号待ちをしている時に、及川さんの顔がずいっと近づいた。その顔を手で遠慮なく突っぱねる。
「今日ゲームで打ってたサーブ、昨日のサーブよりも威力凄かったなぁって。調子良かったの?」
「お、流石りお。いい所に目つけてんじゃん。ーーーそ。今日は昨日よりスピード速かったんじゃない?明日はもっと早いの打つよ」
「えぇ!?まだ強いの打つの!?」
力は無限大ですか!?あんなのレシーブする腕がもげちゃいそう・・・
及川さんは当然、というように鼻を鳴らした。
「今度インハイで青城が対戦する相手は、サーブが特化してるチーム。俺くらいのやつのサーブに慣れて上げられるようになってれば、本番ではビビらずにちゃんとレシーブ出来ると思う。見た感じ、あいつらはレシーブ力が高い。そこにもっと重点置いて、拾えるボールを確実に拾って攻撃に持っていけば・・・」
パチンっと指を鳴らした。
「まずは予選リーグ、突破できるからね」
「そのために・・・?」
ただ自分の調子云々で相手してるんじゃなくて、高校生たちを試合で勝たせるために、色々と考えているんだ・・・。
自分の休む時間も、体力も削って・・・
そこまでして、後輩たちに協力してあげて、
及川さん、青城が大好きなんだね・・・
自分の青春を注ぎ込んだ場所だから、同じ場所で今を過ごすあの子達に良い思いができるようにするって・・・岩泉さんや国見くんに対しても思うけれど、簡単にできる事じゃないよね。
及川さんはカッコつけたがるから、
思ってたって口には出さない。
出さないけれど行動で示す。
こういう所、尊敬するな・・・。
私も、私にできる範囲で・・・
高校生たちに協力しよう。
そう思って小さく拳を握りしめた・・・