第12章 summer memory⑦
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「「あざしたー!!!」」
時計が8時50分を指す頃、ようやく練習が終わった。
私は借りていたパイプ椅子を持って、パタパタと下へ降りる。
「あっ、国見さんの彼女さん!俺、持ってくんで大丈夫っすよ!」
「いいかな?ありがとう!因みに国見くんの彼女でも何でもないからね!?」
階段を降りている途中に、高校生が私の持っていたパイプ椅子を貰ってくれる。どの子も私より大っきいなぁ、何食べたらそんなに大きくなれるんだろう・・・
それに、こないだ試合の応援に行った時も、及川さんと一緒に来た時にこの子たちに国見くんの彼女って思われちゃってたけど、及川さんが結婚してるの、知ってたからなんだろうなぁ。
会社でも上の人しか知らないって及川さんは言ってたけど、何だか暗黙の了解みたいな感じで及川さんが結婚してるのは皆知ってるっぽい雰囲気だった。人気あるからだろうなぁ。
(一緒に住んでること、ますます言えないよ・・・)
フロアに降りると、高校生が及川さんたちOBに整列して挨拶していた。
「明日もよろしくお願いしゃっす!」
「OK。今も9時に体育館出んのは変わってないんでしょ〜?じゃダッシュで片付けなー」
「はいっ!!」
さすが体育会系、返事が気持ちいいな。
挨拶が終わると高校生はあちこちに散らばって片付け始める。
「あっつぅ〜」
服の裾で顔を拭く及川さん。ちょ、捲りすぎてお腹丸見えだよ!お腹割れてるの見えてるよ!
私は彼の首から下はあまり見ないようにして彼に近づく。
「お、お疲れ様」
そして、おずおずと白いタオルを差し出す。
「あ〜サンキュー。なに、マネージャーみたいじゃん、俺専用のっ」
タオルを受け取り顔や首を吹き始める及川さんは、なんて言うんだろう絵になり過ぎて困る。