第12章 summer memory⑦
《summer memory⑦》
りおside
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「あれ?今日はもうここまで仕事終わってるの」
国見くんが席にいない間、机にチェックしてもらう企画書を置いていた私に、戻ってきた彼が僅かに目を見開いて口を開いた。
東京で行われた研究発表会から帰ってきた私は、その週の金曜日から、3日間、及川さんと一緒に仕事終わりに青城へ行くことになった。
金曜日は4時まで練習、その後の自主練を終える及川さんに6時半に会社まで迎えに来てもらう予定だから、今日は何がなんでも定時に帰らなくては!その一心で仕事に取り掛かる自分にムチを打ち、何とか今日分の仕事は既に終わらせていた。
「うん!チェック、お願いします!」
「OK、見とく。あ、さっき及川さんから連絡入ってたんだけど、俺も青城に練習参加しに行くことになったから、ヨロシク」
「あ、そうなんだ!こちらこそ、よろしくお願いします!」
国見くんも青城出身だもんね。今はマネージャーって言ってたけど、元々はここの実業団入れるレベルだったんだし・・・
「国見くんもバレー上手だったんだよね」
「いや、そこまでは。及川さんに比べたら全然だよ」
「え、及川さんってそんなに上手なの?」
普段の彼を見ているだけで、及川さんのバレーしてる姿を見たことがないから全然想像つかない。
「リーグ優勝するチームのセッターやるくらいだから、上手くないわけないよ」
「そ、そうだよね。天才ってやつなんだ」
人間関係もなんでも、卒なくこなせそうな彼のことだから・・・
「いや?天才っていうのは、ちょっと違うかも。俺の中学の同級生にそんなのがいたけど、及川さんは天才じゃない。練習に練習重ねてセンスを磨いた人って感じかな。まぁ、同級生だった天才も、馬鹿みたいに練習してる奴だったけど」
センスを磨いた人・・・
「及川さんはその天才のこと、バレー馬鹿って言うんだけど、及川さんも大概、バレーにどっぷり浸かってると思うんだよね」
淡白な国見くんにそう言わせるほど、及川さんってバレーが好きなんだ。なんか、意外だな。
(早く・・・見てみたい)