第11章 summer memory⑥
「勝ち目のある片想いなら・・・もっと楽しいのかな」
彼も私を気になっていて、両想いの距離感をたのしんで、
あとはタイミングを見計らって待つ、みたいな片想いに憧れてた。
でも・・・
「絶対、無理な相手なんですよね・・・」
勝率0%の恋。
彼に恋した瞬間から、この勝負は私の完敗だった・・・。
結婚してる相手を好きになっちゃったなんて、
菅さんには言えないけど・・・
「りおさ、お前がどんな人のこと好きになったかなんてわかんないけどさ、俺、思うんだよ」
菅さんの言葉は明るくて心に寄り添うように、優しい・・・
「今は無理かもしんねーけど、相手も人間だからさ。人の気持ちに絶対なんて無いと思う。お前の気持ちを相手が知ってるかは知らないけど、好かれて嫌な奴なんていないし、俺は俯いてるりおよりも、前向いて相手を想いやるりおの方が、りおらしいと思うなぁ」
春の太陽みたいに私を照らしてくれる菅さんの言葉に、どこか救われた気がした。
私、及川さんのことなんて絶対好きになんないって思ってたのに・・・いつの間にかこんなに好きになってた・・・
私自身が、絶対って言葉を覆してたんだ・・・。
「そっか・・・そうですよねっ」
なんか心がすぅっと軽くなった気がした。その表情の変化に、菅さんは納得したように白い歯を見せて笑った。
「だべ?お前良い奴だからさ、俺、応援するよ」
「えへへ、菅さんに味方でいてもらえたら百人力ですよ」
「ん、頑張れよ。あ、因みにその相手、俺ってことは無いよな?流石にりお相手でも俺ちょっと困るわ」
「あははっ、そんな解釈されたら私だって困りますよ〜」
その後、私たちは他愛ない話をして過ごした。
自然と笑えている私。なんか、俄然元気出たなぁ。
そして、早く及川さんに会いたくなって、このあとの研究発表会が早く終わることを願っていたーーー・・・