第11章 summer memory⑥
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多くの人が行き交う駅、馴染みのある駅の名前、電車の線。
相変わらず人は多くて、宮城との違いに、日本の首都であることを実感する。
(久しぶりに帰ってきたなぁっ、東京!)
私が暮らしてきた街・・・
この街は、今日も活気に溢れていた・・・。
私はスマホを取り出し、とある番号に電話をかける。
仕事の前に少し会おうとアポをとった人だ。
「あ、もしもし?今、中央口着いたんですけど、何処にいますか?」
《あ〜俺ももうすぐ着くからさ!改札ら辺で待っててくんね?》
「了解です、待ってますね!」
手短に電話を切って、"彼"を待つ。
待つという程の時間もなく・・・、"彼"はすぐに私の前に手を振り現れてくれた。
その変わらない優しい笑顔、泣きボクロに人柄の良さを感じる・・・。
「おかえりりお!久しぶりだなぁ〜」
「お久しぶりです!菅さんっ」
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菅原孝支さんは、私の通っていた大学の先輩。入学式を済ませ、新入生オリエンテーションで私のゼミを担当して色々と大学の施設の案内をしてくれたのが菅さん。それから食堂で見かけると挨拶する関係になり、休み時間がかぶると一緒にお茶するようになったり、
週末は飲み会に入れてもらったりして、仲良くなった。菅さんが都内に就職しても私が学生のうちはよく飲んだりしていたから、本当に気心知れた存在・・・
今日も、久しぶりに東京に帰ると言えばこうして時間を作ってくれる相変わらずな優しい一面に、私はホッとした。
私たちは近くの喫茶店に入った。
アイスコーヒーを二つ頼んだ後、私から口を開く。
「あつ〜い、やっぱり東京暑いですね!宮城とは全然ちがうっ」
「そうだろ?東京は人も多いしなぁ、暑苦しいくらいだよな。俺も宮城から上京してきた時、初めての夏は死にそうになったもんな」
菅さんは宮城の出身で、大学から東京に上京してきた人。人の多さ、テレビでよく見るスカイツリー、池袋サンシャイン、表参道、六本木ヒルズ・・・東京と言えば!なものを前に圧倒されたらしい。
今回私の就職先が、菅さんの出身の宮城だと報告すると凄く喜んでくれた。
「あっちの生活にはもう慣れたか?」
「はいっ。東京と比べちゃうと建物が少なかったりするけど、その分、田舎で落ち着くし、住みやすいです!」