第11章 summer memory⑥
「???」
指さされた私は何のことかさっぱり分からず及川さんを見上げる。
「とりあえずインターハイ開幕までの3日間なら、練習終わりに青城に行って、練習相手はやってあげれるけど、その間に栄養補給は大事だよね?わかるよね?だから、俺の弁当をりお、作って」
「え、私が?」
「そ。どうせ・・・っいた!まだ何も言ってないじゃんか!」
「"どうせ暇でしょ"って言うつもりだったでしょ、もうお見通しよ!」
及川さんが横腹に手刀すると、ぐうっと痛がる及川さん。
もう、彼の次に言うことなんてすぐにわかってしまっている自分がいた。
「ま、本当に暇だし、いいけど・・・」
「ハァイ、じゃあ祝日の金曜日からの3日間頼むね〜」
ポンポンと私の頭に手を置いた。
「ところで、キャリーケースなんて下ろしてきてどうすんの?」
及川さんはリビングの隅においてあるキャリーケースを指さした。
「ほら、言ったじゃない。明日、新人研究発表会で本社の東京へ出張に行くって」
「え〜何それぜーんぜん聞いてないんですけど」
「言ったわよ。またスマホのゲームしてて聞いてなかったんでしょ・・・・・・兎に角、明日は私いなくて明後日の夜に帰ってくるからね!」
留守番よろしく、と言って再び床ふきに精を出す。
はいはい、と及川さんの返事を背中で聞きながら・・・。