第9章 summer memory④
こうして、ごめんなさいを言い合ったけれど、
彼の心は、何一つ救われてない。
「相手の人は、今も二人のマンションに住んでるの?」
「そうみたいだった。こないだ会いに行った時、生活してる感じがしてたし」
岩泉さんが言ってた。及川さんのお嫁さんは専業主婦だって。
だから収入はないし、今も家賃は及川さんが全部払ってるんだと思う。
「そっか・・・」
自分を裏切った女の人のために・・・。
なんで及川さんじゃないのに、私までこんなにやるせない気持ちになってしまうんだろう。
「離婚届・・・・・・書けそう?」
踏み込んで欲しくない・・・
でも踏み込んでしまったからには、もう後戻りはしたくない。
中途半端な情で、彼をより傷つけたくなかった。
だから、聞いた。彼の心に近づいてみたーーー・・・