第9章 summer memory④
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三人分のご飯が、当たり前のようにテーブルに並んでいた。
りおはレンジでおかずのハムカツを温め直してくれて、湯気の立ち込めた味噌汁とご飯をよそってくれた。
「俺が今日帰ってくるって・・・分かってたの?」
「え?そんなエスパーじゃあるまいし、分かる訳ないでしょ〜」
なーに言ってんの、と冷蔵庫からお茶を出しながらりおは話す。
「いつ帰ってきてもご飯食べれるように、毎日用意してたのよ」
「え・・・」
「お陰で毎日二人分のご飯食べて2キロも太っちゃったんだからね!」
当たり前のようにさらりと言ってるけど・・・、それって当たり前に出来ることじゃないでしょ。
「馬鹿じゃないの・・・、いつ帰ってくるか、わかんなかったのに」
「いつ帰ってくるのかじゃなくて、ちゃんと帰ってくるか、が重要でしょ。・・・・・・いただきますっ」
いつものように、俺の向かいに座って自分のご飯を食べ始める、りお。
いつ帰ってくるかじゃなくて・・・
ちゃんと帰ってくるか・・・
「でもちゃんと、帰ってくる気がしたから、・・・待ってた」
りおは、笑ってくれた。
柔らかな笑顔で。氷を溶かすようなそんな温かい笑顔で。
俺は並んだ三人分の食事を見やる。
それはまた、俺と母さんとりおで笑いながら囲むあの日常が戻ってくると・・・
俺を信じて待ってくれていた証拠・・・。
「りお・・・」
こんな、
愛する人も失って、
身近な人に迷惑ばかりかけてぼろっぼろで、
だっさい俺のことを・・・
「お前さ、俺のこと好きすぎかよ・・・」
馬鹿みたいに・・・純粋で真っ直ぐ。
「うるさいな、早く食べなさいよ。食べないなら、また私、太っちゃうじゃない」
ほんと、馬鹿みたい・・・ーーー