第9章 summer memory④
ーーー・・・
帰国後、東京からまた飛行機に乗り、それからバスで体育館までチームで帰ってきて、それから解散になった。駐車場に停めてあった自分の車にキャリーケースと、その他、彼女に渡すための多くのお土産の紙袋を乗せて、発車させた。
ふんふんふふーん、ふんふふーん♪
久しぶりの日本の田舎道を鼻歌交じりに走行する。
移動疲れなんて、これっぽっちも感じなかった。
だってそうじゃん。頭の中は、彼女でいっぱいだったから。
ね、どんな顔で驚いてくれるかな?
どんな笑顔を見せてくれる?
そして、どんな顔で、おかえりを言ってくれるのかな・・・
考えれば考えるほど彼女に会いたくて堪らなかった。
ーーー・・・
二人で借りた、マンションの一室。
駐車場に車を停めて、まず一番にこの身一つで彼女の前に現れようと思って車の荷物はそのままに、俺はエレベーターを使い自分の家の階まで行き、そして玄関の前に立った。
時刻は3時。この時間だと、まだ買い物に出ていないから、家にいるはず・・・
鍵を取り出して、解錠する。
少し開いた玄関から、懐かしい、彼女の好きな芳香剤の匂いが鼻をかすめる。
「ただいま〜」
扉を開けて、帰ってきたことを知らせる。
けれど、返事はない・・・
「あれ・・・?」
予定ならここで、スリッパの音を立てて驚いた顔の彼女が、嬉しさを噛みしめておかえりを言ってくれる筈なのに・・・。
彼女の靴はあるのに、家の中の電気はついていない。
まだ昼間だから、陽の光で過ごしていられるけれど。
・・・靴・・・・・・?
知らない、見たことの無い靴が、ある。
男が履くような・・・でも俺、こんな靴は履かないし、見覚えもない。
何・・・・・・
いや、違う。今一瞬、何かが胸をよぎった・・・
違う・・・違うきっと・・・
ガタッ・・・
奥の部屋で物音がする。きっとそこにいるんだろう。
俺は靴を脱ぎ捨て、ゆっくりと家の中へ入っていく。
嫌にしんと静まり返った空気。
リビングには、何故か二人分の食事をしたあとの食器がシンクに置かれている。
俺がいつも腰かけているソファーには、知らない、黒いビジネスバッグ。
誰・・・一体、誰の・・・
彼女は・・・・・・