第9章 summer memory④
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"え?2日後にこっちを立つって?!"
"季節外れのハリケーンが近づいてきてるらしいんだよ。予定より数日早いけど、このままここに居続けて、選手のみんなに被害が被るのは避けたいんだ"
遠征真っ只中にそう告げられた。
ま、でも賢明な判断だと思った。
こっちで台風の影響で飛んできたものとかにぶつかって、怪我でもしたら元も子もないからね。
"そっかぁ〜、それなら仕方ない!あ〜あ、残念だなぁ"
"及川さん、全然残念そうじゃないですね。あ、そうか、早く奥さんの元に帰れますもんね"
"国見ちゃんご名答〜。そ!リーグ中に入籍になったから、まだチームメイトと、会社のごく一部の人にしか報告してなくてさ。戻ったら一緒に挨拶回りする約束してるんだ"
"いつもそうですけど、入籍してから特に、新婚オーラというか、幸せ全開ですね及川さん"
と、後輩に言われるほど、俺はあの時、幸福感に満ちていた。
"早く帰るの、内緒にしておこっと!帰ってびっくりさせてあげたいから"
そう思って、彼女に帰る連絡はしなかった。
現地で、帰ってから彼女に見せる写真を撮りまくったり、彼女へのお土産の量が練習用具よりも多くなるくらい買ったり、突然帰ってきて、彼女の顔が驚いた顔から笑顔で抱きついてくれることまで想像して、帰国した・・・
そんな未来になるだろうと、疑う余地もなくそう思っていた・・・
あの日までは・・・ーーー