第1章 spring memory①
ーーー・・・
〜〜〜〜〜!
「最悪最悪最悪最悪!」
ホテルのベッドで、枕に顔を押し当てて、何度私はこの台詞を口にしたんだろう。もう数え切れない苛立ちを抑え込むように突っ伏したベッドでバタバタと足を動かす。
つい小一時間前までは、緊張しながらも楽しい時間を過ごしていたのに、あの出来事で一変した。
(あのトオルって人・・・ほんと有り得ない!)
先程の彼とのキス。盛大に平手打ちをかましたあと、逃げるようにみんなのいる部屋に戻り、急用ができたと言って、お金を渡し、先に帰らせてもらった。
ホテルに着くとシャワーで先程のキスをなかったかのように洗い流していくが、起こったこと自体が、シャワーなんかで流せるわけ無かった。
きっと酔っ払っていたのだろう、飲みの席ではよくある話だと済ませればそれでいいんだろうけど、尊敬するバレー選手にそんな事をされるなんて・・・何だか許すにも許せない。
(そもそも何なの、あの余裕ぶっこいた顔!)
慣れてますよ〜感がすごい。イケメンだからってやっていい事と悪い事がある。
酒が入ってなければ私みたいな普通な女、目にも止まらなかったクセに!
折角今日は天気も良くて、同期も良さそうで、新しい仙台の地で良いスタートを切れそうな予感がしてたのに、台無しだった。
あーもう、まだイライラがおさまんない!!
(もういい、もう、忘れる!)
同じ会社だからって、もう接点も無いだろうし、存在を記憶から抹消しよう。忘れることは大事。
それに明日は、叔母さんの家に行くことになってる。あんな奴の事を、いつまでも引きずってらんないや。
(さ、もう寝よ寝よっ)
ふうっと、息をついて、私は布団をかぶることにしたーーー・・・