第3章 4月
「いらっしゃいませ〜」
いつものごとくゆうきさんがお店にやってきた。
「あ、ゆうきさん!」
「夢芽ちゃん。お疲れ様。」
わたしの顔を見てにこりとそう言った。
ひまわりパンをトングで取り、まっすぐこちらへと向かってきた。
会計をしながら、ついに口を開く。
「あの、ゆうきさん……」
「ん?どうしたの?」
お財布からお金を出しながら応えた。
「ゆうきさんって、お仕事なにされてるんですか…?」
その言葉を聞いて、ゆうきさんはぴたりと手を止めた。
「あー……」
困ったように笑い、頭をかくゆうきさん。
「そういえば言ってなかったもんね。帰ったら、話すよ。」
そして、ありがとう。と言ってお店を出てしまった。
やっぱり、聞かれたくなかったのかな?
ずっと教えてくれていなかったし、なにより今の投げるような姿勢がそれを物語っていた。
私は少し落ち込んだ気分を誤魔化すように、並ぶパンたちの角度を合わせ、これでもかというくらい綺麗に並べ直した。