第1章 始まりは青
ドレスのファスナーを下ろし
店長がいなくなると同時に
ヘアメイクさんが入って来た
「さん
凄いですよ!!!
こんなにお店の前に
豪華なスタンドフラワーが並んでる
バースデーなんて
今まで見た事ありません!
きっと素敵な日になるので
髪も気合い入れなきゃ、ですね。」
少し地味目なこの女は
見た目に反して
セットの腕前だけはいい
今日のドレスのテーマは
ウエディングだから
髪もアップにしよう
「派手過ぎず、それでも地味過ぎず
うなじと首元が
綺麗に見えるようにしてくれる?」
ネックレスはシャネルに
ドレスに合わせて
手にはレースのグローブを
そして
頭には4℃のティアラなんて乗せたら
本物のお姫様で、
本当にウエディング衣装
ヘアメイクの女性は
手際良く私の髪をピンで止めて
注文通りの髪型にしてくれた
「今日の衣装部屋は
さん専用になっていますから
ゆっくりしていて下さいね。
この部屋から出て
いつもは突き当たりを右へ行くと店内ですが
今日はステージからの登場なので
左へ向かって下さい
開店の時間になりましたら
また店長が呼びに来ますので
お化粧直しでもしながら
ゆっくりどうぞ。」
つくづく私は恵まれている
……親がいないって事以外はね。
ヘアメイクさんが出て行くと
急になんだか
緊張して来た
悪い意味の緊張ではなく
これから先への
期待値ばかりだ
本当に最高よ
売上もきっと
これから抜かれる事がないくらいの
伝説になる
夜の広告メディアからも
取材を受けたし
私が一番だなんて気分を良くするに
決まってる