第2章 厨二病な世界
「もしかして
俺が誰だか分からへんの?」
……とりあえず頷いた
他にどうしようもなかった
知らないものは知らないのだから
……というか、ここ、
本当に現実の世界だよね?
だって私は確かさっき
紐なしバンジー……
いや、二回も言うのはよそう
私の様子に、男が困り顔になった
「…うーん、
記憶障害が起きてんのか?
ファットさんの事
忘れてもうた?」
悲しげな声が
地味に罪悪感を刺激してくる
……気まずい。
記憶障害って……
あれだよね?
ドラマとかでよくある
記憶喪失のことでしょ?
でも私
記憶はしっかりしてるわよ
……あんたの事は
まったくわからないけど
あんた以外のことなら
自分のこともわかるし
育った環境も、
学校も、
生活習慣も、
そして落ちる前の出来事の記憶まで
ばっちり覚えてる。
とりあえず私は
記憶喪失ではないことを証明するために
名乗りをあげることにした
「私は、
クラブ勤めのホステスよ。」
「自分のことは
ちゃんとわかってんねんな。」
「………あってる?」
「知らへん。」
「………………………は?」
男の珍回答に目が点になる。
きっと私は今
鳩が豆鉄砲を食らったような
顔をしているだろう
……知らへんって。
じゃぁ、私があんたの事を
知ってるハズがないじゃない!
私はもうストレートに訊くことにした
「それで、あんたは誰?」
「俺はなぁ……」
謎の男は、
少しもったいぶるように
一呼吸おいて私に告げた
「君の王子様や。」