第2章 厨二病な世界
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優しく何かが
唇に触れる感覚がして
「し……設……ちょ……ッ」
うめくような掠れた声が
私の口から発された
「大丈夫や。
……ここにおる。」
誰かが伸ばした私の手をとり
少し低めの
落ち着いた声でそれに答えた
ふっと急激に意識が浮上する
過去から、
現在へ
昔から、
今へ
握りしめる手を頼りに
私は現実へ帰った
ゆっくりと目を開けると
部屋の天井が
まず視界に入ってくる
少しばかりの騒音と
快適な空調
視界に困らないだけの控えめな電光
それら目に映るものから、
私はここがあの世ではなく
現実の世界だとすぐに認識できた
「……………?」
認識は出来たものの
これは本当に
現実なのだろうか?
だって私はさっき
バンジージャンプもビックリな高さから
紐なしで落ちていたのだから
しかし───
「気ぃ付いたか?」
横からかけられた声は
リアルに耳に響き
身体が少しばかり痛む
視線を動かして確認すると
声の主はまったく見覚えのない
──知らない男だった
(え、誰?)
ほっとした
安堵の表情を浮かべる顔は
私より少し大人びたもので
どんなに頭の中の記憶を探っても
脳内メモリに掠りもしない人物だ
「おヒイさんが無事でよかったわ」
親しげな微笑みを浮かべる
愛嬌のある顔を
私はじっと見つめる
(え、ほんとに誰?)
再び脳内検索をかけるが
まったくヒットしない
完全にフリーズした私に
男は首を傾けた