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【ヒロアカ】63億分の1(ファット)

第2章 厨二病な世界






「きっと
いつか迎えに来てくれるから……」



私の手を引く
施設長の背中が

酷く悲しげで

胸が裂けるように
ズクズクと痛い



……やめてよ

きっとなんて事はない



その言葉が
その希望が

呪いのように
私を支配したんだ



勉強を頑張れば

いい高校に入れば

綺麗になれば



きっと迎えに来てくれると
ずっと思っていたんだ



……でも
来なかったじゃない



連絡すら
なかったじゃない



だから私は

私を捨てた人生への復讐で
捨てる方を選んだ



捨てる事が出来る
立場に登り詰めたの



世の中の人間が寄ってくるよう
努力をしたのよ



誰かが言っていた

「人は生まれながらに
平等じゃない」と。



その言葉は正しい



私は
そこらの平和ボケした人間とは違う



親からの愛情をもらう事もなければ
帰る家がある訳でもなかった



……実に馬鹿げた人生だと思わない?



復讐劇なんて言っても
私を捨てた人は
どこかでヘラヘラ笑っているんだろう



「いつかきっと」



その言葉に縋り付いた結果が
これだ



私は騙されたんだ



なにがきっとだ

なにが生みの親だ



お迎え詐欺め

オレオレ詐欺よりも
よっぽど悪質で陰湿で呪わしい




せめて電話の一つでもあれば
今とは違った価値観を
持っていたのかも知れない



せめて……



私の事を

忘れないで……



なかった事にしないで欲しかった




だから
私をそっち側へ

連れて行かないで……



私は自分の手を
施設長に伸ばした




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