第1章 始まりは青
重力が完全に私に敵意を向け
戸惑いなのか
恐怖なのか
はたまた別のモノなのか……
全く定かではないけれど
心臓が
凝縮したように痛くなる
落下してるもんだから
チリチリと風が攻撃的で
せっかくのヘアセットも
ぐちゃぐちゃで
4°Cのティアラも
風で飛ばされそうだ
………いやいやいやいや
ティアラの心配をしている場合ではない
まず、この命の危機を
どうやって乗り切ればいいのかを
考えろよ私!!!
下に目を落とせばビルや商店街が
視界に映り
ボンヤリと
栄えている街だな、
なんて事を思ってしまうあたり
私は既に考える事を
放棄しているのだろうか……
そう言えば昔
お客さんが
「飛び降り自殺は
途中に恐怖が勝りすぎて
気絶しちゃうらしいよ」
と話していた
と言う事は
これはきっと夢の中なんだろう
私は静かに目を閉じて
飛んでいきそうなティアラを
手で抑えた
「………………。」
………………
………………
風圧でバタバタなびく
ドレスが肌に当たって
地味に痛い
「………………。」
………………
全身に伝わる風の感覚が
夢と呼ぶには程遠い事を
改めて痛感してきて………
あんの
クソホラ吹き野郎
今度会ったらビンタしてやる!!!
と意気込んだところで
どうにもならなかった
「……も……ヤダぁ……」
あぁ………
まさか自分が地面に
ペリグリーになる日が来るなんて
微塵も思ってなかったな……
何でこんな事になった……?
私は今日
最高の舞台に立つつもりでいたのに
何で最悪の事態に陥ってるの!!
涙が溢れて来るが
それもまた
風に浮いて空に舞う
地面との距離が近くなるにつれて
落下するであろう場所も
見えてきた