第11章 ダーリン私に
カーテンの向こうがオレンジ色に光っている。
いつの間にか夕焼けの時間になっていたのだ。
有と秋也は汗だくの身体を寄せ合ってベッドに横たわっていた。
「秋也くん、もうちょっとそっち行ってよ」
「ん?」
「ベッドから落ちちゃいそう。秋也くん身体大きいんだもん」
「有のベッド、小さいな」
「私1人ならこのサイズでいいのっ」
「わかった。こうすればいいんだろ」
秋也は有を両手でかかえて抱き寄せた。有の半身が秋也の上に乗る。
「お、重くない?息苦しくない?」
「これくらい重くない。有は男の体をナメすぎだ」
「ふうん…」
有は秋也の胸板に頭を転がせた。かたいけれど温かい。
もじもじしながら秋也の顔を見上げると、秋也は考え事でもするかのように目を閉じていた。
「何を考えているの?」
「ん?ああ…」
「私に飽きた?」
「はっ?」
秋也が驚いて有の顔を覗き込むと、有は拗ねるように口をとがらせていた。
「男は一度セックスした相手には飽きるって聞いたことある」
「なんだよそれは、どこ情報だよ」
「1回で飽きてヤリ捨てなんて、秋也くんサイアク〜」
有は顔を隠すようにして、秋也の胸にグリグリと額をすりつけた。
秋也は少し考えて、どうも有なりの照れ隠しらしい、とピンときた。
「あのなあ、有のことを考えていたんだぞオレは。こうして有とセックスできて、感慨深いなー、って。そう思ってたんだ」
有は顔をうつ伏せたまま秋也の言葉に耳をすませた。
「有に触わることができたし、触わってもらうことができた。こんな日が来るのを、ずーっと、夢見てた」
秋也の声音は優しく、しっとりと有の中に染み入った。