第1章 抑えた声
秋也はまっすぐな性格の人間だ。思ったことは正直に口に出す。
彼は、本当に有をキレイだと思っているからそう言ったのだろう。
秋也がそういう男であることは、有にもわかっていた。
しかし、だからと言ってたやすく外見に自信を持てるほど、有もおめでたくはないのだ。
「そりゃあね、秋也くんくらいスタイルがよければ、ダイエットも必要ないよね」
小中高大と野球を続けている秋也は目立って背が高く、均整の取れた体格をしていた。
体づくりのために、食事の栄養バランスにも気を配っている。今まで生きてきて、太って困ったことなど一度もないのだろう。
有は、食べれば食べただけ太る体質だった。
それなのに最近は秋也が「有が好きそうだから買ってきた!」とプリンだのなんだのを買い与える始末。
わざわざ買って来たものを断るわけにもいかず、有はカロリー計算に頭を悩ませる日々だった。
「秋也くんはモテるから、横にいる私も秋也くんに釣り合うようにしないとね。私は顔が可愛いってわけじゃないし、スタイルくらいは気を使わないと」
「そんなに痩せたいのか?」
「女子って、そういうものなの。ふふっ」
だから気にしないで、と言うように有はニコニコ微笑んでいたが、秋也はまだ納得のいっていない顔をしていた。