第7章 裸の彼女
裸の有は、不思議な感覚を覚えていた。
自分の身体を隠すものはもう何もない。
なんだか、心まで開放されたような気がした。
それにしても…、自分を脱がせた男の手際のよさはなんということだろう。そういえば秋也はモテるのだ、女を脱がせるのは初めてではないのかもしれない。
そう思うと、少し黒い気持ちがこみ上げた。
「秋也くん…もしかして、こういうの慣れてる?」
「ん?」
「脱がせるの、上手だよね」
「そうか?サンキュー」
「イヤミで言ってるんだけど…」
「えっ?」
クスッと有の口から笑い声が漏れた。
「私って、イヤミったらしい女なの」
「そうなのか」
「おまけに嫉妬深いよ」
壁の方を向いて喋る有の表情は、秋也からは見えない。
「もしかして秋也くんは、私以外の女の人の服を脱がせたことがあるのかな、って思ったら、イヤミのひとつも言いたくなっちゃった」
「あるわけないだろう、そんなの」
秋也は少し大きな声で、即座に否定した。
「有だけだ」
後ろからギュウと抱きしめられた。有の背中と秋也の胸が直に触れ合い、体温が交錯する。
有の腰のあたりに、固く熱いものが当たった。それが秋也の彼自身であること、多分あえて当てていることを、有は理解した。
「有だけだから」
秋也が彼女の耳たぶに唇を当て、熱っぽく囁く。
有はそれに応えるように、己を拘束する秋也の腕を強く握った。心の中の黒いものが、サアッと晴れていくのを感じた。