第7章 裸の彼女
少しの間、沈黙があった。
「いやか?」
秋也が有の髪を優しくなでつけた。
「いや…では…ない、と思う…。けど…」
か細い声で有が答える。
「けど、なんだ?」
「…不安、かな」
視線を漂わせる有。
秋也は、有と自分の額をコツンとくっつけた。
「有が本当に不安なら、今はやらない。でもいつかはしたいって思う。有の全部を、見たいからな」
柔らかい声だった。
目を伏せたまま微笑む秋也の顔を、有はジッと見つめた。
秋也が自分のことをことを知りたいと言ってくれたことが、素直に嬉しかった。「いい子」の自分ではなく、本来の自分が求められている、そんな気持ちになれた。
それと同時に、今までにつき合ってきた男性たちも、もしかしたらそうだったのかもしれないと思い始めた。自分を好きになったからこそ、深くわかり合おうとしてくれていたのかもしれない、と。
有は今まで、それを全部はね除けて生きてきた。
けれどもう、そのままではいけないんだろう。
クッと、唇を噛んだ。
秋也に自分の全部を知ってほしい、という気持ちが湧き出てくるのを有は感じた。
そしてそれと同じくらい、あるいはそれ以上に、秋也のことを全部知りたいと思った。
有は秋也の胸元にそっと手を当てると
「いいよ…」
と呟いた。