第6章 心と身体に
有、変わったな。
と秋也は思った。
軽口を叩いたり、大声で笑ったり、だらけた姿を見たのは初めてだった。
何より、キスが違う。
今までの有は、キスをしようとすると、必ず一瞬身体を強張らせていた。有自身もそのことには気づいていなかっただろう。
慣れていないからか、と最初は思った。
けれど何度回数を重ねても、有の緊張は変わらなかった。
「有は身体に触れられることを恐れている」と秋也が気づいたのは、何回目のキスの時だっただろうか。
自分と有は、まだ安心して唇を重ねられる関係になっていなかったのだ。
秋也はそう考えた。
秋也は人前だろうがなんだろうが、関係なくキスもハグもしたい方だった。だがなるべく我慢した。少し寂しかったが、有の負担になることはしたくなかったのだ。
有はいつか、安心してオレにキスをするようになってくれるだろうか。
そんな風に悩んでいた昨日までを思い出した。
秋也は有の舌を甘噛みしながら、彼女の手をキュッと握った。
有も秋也の指先を愛おしそうにさする。
柔らかい触れあい。
ギュウと拳を固く握り、義務のようにキスをしていたかつての有はもういなかった。
秋也は目尻に薄く涙を浮かべながら彼女の唇を慈しんだ。
「っ、ハァ…」
長いキスを終えた有は、大きく酸素を吸い込んだ。
秋也は有の肩に手をまわし、耳元でソッとささやいた。
「したい」