第6章 心と身体に
秋也の言葉で、有の脳に過去の男たちの姿が蘇った。
「オレのこと愛してないんだろ」
そう言って自分から離れていった男たち。
そして今、目の前の男もそれと同じ言葉を吐いている。
同じだ。結局同じことだ。
有は思った。
秋也くんも私を捨てるんだ。やっぱりダメだ。信用しちゃダメだ。はねのけなければダメだ。自分に触れさせちゃダメだ。
開きかけた心の扉を有が再び閉じようとした時
「でもオレは、有のこと好きなんだ…」
秋也の目から大きく涙がこぼれた。
寒さからでなく、湧き上がる感情で鼻の頭を真っ赤にした彼は、あまりに悲痛な姿に見えた。
「無理してオレと付き合わせて、すまん、本当に…。でもどうしても、どうしても有と一緒にいたかった…。有がオレを好きじゃなくても、オレは有を、好きなんだ…」
喉の奥から絞り出すような、痛々しい声だった。
秋也の涙は止めどなくハラハラと落ち、有の膝元を濡らした。
熱い。彼の涙はひどく熱い。
有は思った。
なんて熱いんだろう。熱が、脚から全身までジワジワと広がっていく感じがする。
心の中にまで彼の熱が触れてきたような気がした時、有はすべての抵抗を諦めた。
ああ、この人に、これ以上嘘はつけない。
「っ…秋也、く…」
有は秋也の肩に抱きつき、
「うっ…ふ、うえぇ…秋也くん…うわああぁん」
声を上げて泣いた。