第21章 Wデートに行きましょう…?
その後私達が再びスケートをする事は無かった
スケートリンクを後にして園内へ戻ると辺りはすっかり暗くなっていた
携帯画面を見ると閉園までまだ時間がある
(ここはやっぱり定番の………)
「観覧車に乗ろう!」
「……どれ?」
「あれです!」
時期的にイルミネーションでキラキラと輝く園内は流石【光の遊園地】とうたっているだけあって幸せのため息を漏らす程綺麗だ
そんな景色を一望出来る乗り物、乗らずには要られないッ!!
私達はカップルだらけの列に加わった
「流石に夜は冷えるなぁ……」
「コート貸そうか」
「いえ!大丈夫です!」
「………そう」
彼の心遣いは嬉しいし何より彼はこれくらいの寒さは平気だと言っていたので借りても問題無いだろうが、傍目から見てそれはどうだろうかと思うので遠慮させてもらった
暫く並んでやっと乗り込んだ観覧車は案外狭い
私でそう感じるのだから彼はもっと窮屈だろう
彼はキョロキョロと辺りを見渡している
「ずいぶん遅いね」
「これは景色を楽しむ乗り物やからゆっくりで良いねん!」
「ふーん」
「見て!キラキラ!」
「本当だ」
「イルミネーションめっちゃ好き!」
「……沙夜子は好きな物が沢山あるんだね」
「……確かに。イルミさんは?」
「うーんまだわかんない」
「そっか……」
観覧車は気が付くとてっぺんに登っていて後は下るだけ
私とイルミさんの生活も近い未来に折り返しを迎えるのだろう
見下ろすそこには眩い光が広がり其を見詰める彼の瞳は光が映って輝いていた
「イルミさんの好きな物、これからいっぱい一緒に探そう…?」
「うん」
「これからもよろしくです」
「よろしくね」
カップル達は定番を辿ってキスでも交わしているのだろうか、なんて考えたが
穏やかな微笑みを向ける彼を見られただけで胸が一杯になって
限られたこれからを話せるのが、よろしくねと言い合えるのがたまらなく嬉しかった
観覧車を降りた私達はイルミネーションを見て回り沢山の写真を撮った
ツーショットは一枚だけで他は風景のみだが何だか特別な気がして他の写真に私達が写る事は無かった
寒い夜空の下キラキラ輝く光の世界を眺める彼は綺麗過ぎて何故だか涙が溢れそうになったのは私が少しノスタルジーだったからかもしれない