第21章 Wデートに行きましょう…?
丁度反対側に出入口が見えるがそこまで手すり無しでリンクを横切るのはリスクが高い
転んでしまった場合スカートでは精神的ダメージもデカい
暫く出入口を見詰めた後に私は静かに手すりを伝い滑っていたが、不注意にも目前の人に気付かず体当たりしてしまった
「すみません!」
咄嗟に叫ぶと
「沙夜子何してるの?」
と頭上から単調な声が降ってきた
「……イルミさん……」
私は助かりたい一心で彼を見上げる
「私滑られへん……出口まで引っ張ってくれへんかな………」
渡りに船とはこの事である。とんでも無く情けないお願いだが
いきって経験者だ、とか言ってなくて本当に良かった
「いいよ」
くるりと踵を返して右手を私の方へ向けてくれた
私は有り難くその手を両手で握り絞める
先程迄はあんなにリスキーだった中央突破は彼のお陰であっという間にクリアしてしまった
私は普通の地面が恋しくなって
暖かいストーブのかかったベンチエリアへと目を向ける
「ありがとう!ほんまに助かった…………私お先にちょっと休むわ、イルミさんは楽しんどいて!」
「俺ももう良いよ」
「なんで…?楽しくない?」
「楽しかったよ」
「…?」
イルミさんも流石に冷えたのだろうか
私達はスケートシューズを脱いでストーブで暖をとった