第2章 お金と条件
イルミさんが我が家にやって来た晩、昨日作っていた残りのカレーを出した
明日まで食べる予定だったがすっかり空になってしまった
…別に良いのだが。
一人暮らし用の小さなちゃぶ台に対面する様に二人分のカレーが並ぶ
普段来客が少ない分不思議な気分だ
「いただきます」
「…い、いただきます」
ぼーっとしている内にイルミさんにリードされる形で夕食がスタートした
(そう言えば…… 少食そうなイメージやけど。……それ以前に口に合うんかな…)
自身よりも多く盛ったカレー
イルミさんはスプーンを口へ運ぶ
その何て事の無い些細な所作のひとつひとつに上品さを漂わせる彼を見て、彼がお坊ちゃんである事を思い知る。
(そりゃそうか。天下のゾルディック家の長男ですもんね……)
ソファーも無い我が家で一応座椅子はお譲りしているものの、何だか申し訳なくなり居たたまれない…
カチャカチャと食器の擦れる音だけが響く食卓に
「おいしい」
と言う抑揚の無い声が響いた
なんという光栄…!品格の違いから庶民の味がお口に合うのかと不安だった私の心に染み渡る言葉だった
「ありがとうございます!」
綺麗に平らげられた食器を洗いつつ思わず笑みが溢れた