第2章 お金と条件
チラりと盗み見てはニヤけてしまわない様に頬の内側を噛み締めていると不意に目が合った
「さっきからどうしたの?顔、何か付いてる?」
くりっと首を傾げる仕草に心臓が止まるかと思い、スムーズに言葉が出なかった
「……っ!いえっ!……あはは……」
乾いた笑いを漏らす私を見据えた黒々とした瞳から目線を逸らせない
(……気まずい…)
…あんなに見なければ良かった……。
額から流れた汗を前髪を整えるふりをして拭う、と掛けられたセリフに変な声が出た
「ねぇ、君名前は?」
「へ?!」
確かに私は自分の事を何も話していなかった…盲点
「あ、私神崎沙夜子って言います。24歳のフリーターです…」
「じゃあ神崎って呼べば良い?」
「いえ、そちらは名字なんで…出来れば沙夜子でお願いします」
「ふーん。じゃあ沙夜子ね」
「……っ…!!!ありがとうございます!」
(名前呼ばれたぁぁぁーっ…!!!!!)
痺れる程の幸福に涙が流れそうになるのを耐えて頭を下げると頭上から
「同い年なんだね、意外」
という呟きが降ってきて頭を上げる
「意外と申しますと…」
「19、20くらいかと思ってたから。」
確かに私は童顔だが、未成年に見えるというのは複雑な気分だ。
(大人の色気出したい…ほしい…)
「まぁ、これからよろしくね」
「はい!宜しくお願い致します!」
差し出された彼の手
私は嬉々として握り締めた。