第150章 転がるケーキ
「おかえり」
「っ………イルミさん………」
彼は出会った頃の出で立ちで立っていた
しかしその身体は半分光の中に引き込まれていて巧く頭が回らない
「良かったよ、最後に会えて。それじゃあね」
背中を向けた彼
…………消えてしまう
大好きで愛しくて仕方がない彼が
居なくなってしまう
「………嫌や………嫌や!!!!」
溢れて落ちる涙をそのままに叫び彼の背中にすがり付く
「お願い!!まだ………まだ一緒に………」
何も語らない背中を力一杯引っ張り叫ぶ
彼との日常が消える
眠る彼の寝息、ホットコーヒーの香り、針を磨く音、ニュースに笑う横顔、星を眺める背中、雑誌を捲る指、真っ直ぐな瞳、名を呼ぶ声
寝起きの顔
意地悪な笑顔
優しい微笑み
……………全て全て全て
…………消えてしまう…………