第149章 リストの文字
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飛行機に乗り込む迄の間私達は空港でお土産を購入した
彼は安定して私の家族にお土産を購入する
そういう気遣いは出来るのにツアー客には聞こえる音量で文句を言う不思議な所がある
きっとそれは私がテリトリー内の人物でその家族だからこそであって
ツアー客は全くの他人という違いからなのだろう事は理解しているのだが
そんな彼の極端に欠けた人間性すらも愛しく思ってしまう私は末期だろう
慌ただしく買い物を済ませて機内に乗り込めば飛行機はぐんぐん空を昇る
白い色が広がる土地を上空から眺めてぎゅっと痛んだ心臓だが
後部座席から聞こえた"クリスマス"という単語にドキリと胸が跳ねた
(……まだ、…………まだイルミさんと出来る事………!)
私はスケジュール帳に挟まった紙を開いた
棒線ばかりの文字の下に新しく文字を書き入れる
"クリスマス"
今日がイブなら明日はクリスマス
またケーキを買おう。彼の大好物を作ろう
なんて考えれば旅行の終わりは楽しいイベントへの出発に思えた
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数日ぶりの自宅
古びたアパートに軋む床
彼と二人きりの慣れ親しんだ部屋で私達は思い出話に花を咲かせる
「何処が一番楽しかったですか?」
「函館元町かな。歴史的価値のある建物が多かったし」
「あー!綺麗でしたよね!」
「沙夜子は?」
「私は夜景も湯の川温泉も修道院も………全部です!」
「いつも全部だね」
「はい!イルミさんと行けば何処でも楽しいです!」
「沙夜子は本当に馬鹿だね。」
彼の声色は柔らかくその眼差しは優しいものだった
その夜私達は出前のお弁当を頼んだ
とにかく家から出ずに買い置きのお酒で乾杯して録画していたテレビやアニメを並んで見た
そして
「おやすみ」
「おやすみなさい!」
2つ並べた布団で眠りに入ったのは深夜3時を過ぎた頃で
私は彼と手を繋いでハイキングへ行くとても素敵な夢を見た