第149章 リストの文字
そこかしこから聞こえる客引きの声にキョロキョロと辺りを見渡しつつもしっかりと握られた手を揺らす
「見てください!カニめっちゃおっきい!」
「うん。」
生け簀に売られたカニやウニ、ホタテなんかを眺めながら歩くだけで非現実的な空気を味わえるのだが
「せっかくやから何か食べましょうよ!」
「うん。」
ここは是非とも何か食べておきたい所
私達は露店で海産物を食べられる店の列に加わった
「何食べるか迷います……」
「そうだね。」
ウニにイクラ、ホタテのバター醤油、カニの脚………魅力的なラインナップに中々注文を決められない私に彼は
「食べたいの全部食べれば良いじゃん」
なんてリッチな発言をする
それは流石に、なんて苦笑いを浮かべた私だが
「食べようよ。」
なんて瞳を輝かせるものだから思い切って注文した
数日前、この旅行でウニやイクラが好きに成った彼
また食べられるかな、なんて可愛らしい台詞が頭に蘇って是が非でも彼に食べさせてあげたいと思ったのだ
…………単純に私も食べたかった。
店の横に用意された立ち食いスペースで新鮮な艷めきに歓声を上げる
全て彼と半分こだがそれにしたって贅沢だ
殻に乗ったウニには程好く醤油が掛けられていて濃厚でクリーミーな味わい
イクラは一粒一粒が大きく食感が良く、カニの脚も身がぎゅっと詰まっていて絶品だった
最後に食べたホタテのバター醤油も身が大きく旨味の詰まった一品で私を笑顔にした
「美味しい。」
なんて単調な彼の声も何処か嬉しそうでキュンとする
その後店を後にした私達は市場を見て回り人波をバックに写真を撮ったりした