第149章 リストの文字
「身体熱いけど熱でもあるの?」
「………いえ……元気です………」
いたずらな微笑みで私をからかう彼は恐ろしく美しくて顔が見えない様にぎゅっと抱き付けばクスクスと笑い声が降ってきた
私が真っ赤な理由もやけに体温が高い理由も全部解っているくせに其れを指摘するなんて彼は意地悪だ
そしてまた背中をなぞられてピクリと反応する肩が羞恥を煽る中、私を解放した彼の腕は私達を包んでいた掛け布団を取り払ってしまった
驚きの余り絶句する私を再び腕に閉じ込めた彼を呆然と見上げれば彼は妖艶な眼差しで重なる身体を眺めていた
「ちょっと!!」
「何。」
「恥ずかしいです!」
「沙夜子も見てみれば?」
「………。」
羞恥と好奇心の間で揺れた心だが好奇心に抗えず身体に視線を向ける
「………~っ……」
…………見なければ良かった……。私は瞬間で後悔した
下衣だけを身に付けた男女が脚を絡めて抱き締め合う光景は想像以上に艶かしく視覚的刺激が抜群だったのだ
鍛え上げられた完璧な肉体に抱き締められているのが自身なのだと再確認すると余計に恥ずかしく逃げ出してしまいたい気持ちで一杯に成った
「…………私………」
「ん?」
「服を着ます!!!」
裏返る声で高々と宣言をして彼の胸板を押しやればすんなり解放してくれたので脱兎のごとく布団を去った
私がキャリーバッグから洋服を引っ張り出す間胡座をかいて私を眺める彼の視線に爆発しそうになりながらも洗面所に辿り着き鏡に写った自身の姿に再び赤面した
胸元からお腹迄数え切れない程の薄紅色の痕が残された身体
勿論昨夜彼が付けた物で……あの形の良い唇が私の身体に触れた証なのだ
暫く自身の身体をぼんやり眺めて彼の体温の余韻に浸ってしまった私は自分で思うよりも淫乱なのかもしれない………なんて思ったりした
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最終日の今日、観光は一ヶ所のみで後は飛行機で帰るだけ
そんな私達がバスに揺られてやって来たのは函館朝市だった
まだ朝早い北国は真新しく冷たい風を吹かせる
そんな中観光客で賑わいを見せる市場は他のツアー客も合わさって朝とは思えぬ活気だった