第148章 北国最後の夜
うっすらとした灯りに照らされた彼を見上げてまた心臓が跳ねる
大きな瞳を細めて鬱陶しそうに髪をかき上げた彼は真っ直ぐに私を捕らえていて
その瞳が不適に輝いたのを私は見逃さ無かった
「……あの………イルミさん………?」
戸惑い震えた声を無視して近付いた彼は私の耳に唇を寄せた
途端に柔らかな感覚と舌のヌルリとした感覚が走る
熱い唇は間違い無く彼の物で、吹き込まれる吐息迄もが熱を帯びていて私はぎゅっと彼の浴衣を握った
ピチャピチャと鳴る水音は私の思考を支配して簡単に息が上がる
耳元を愛撫した唇はゆっくりと首筋を辿り時折歯を立てて甘く噛まれれば淫靡な刺激が肌を粟立たせた
短く切れる息をそのままに彼の名を呼べば彼は悠々と上体を起こして私を見下ろし
「沙夜子、黙って任せて。何もしないから」
有無を言わせない声色にクラクラと目眩を覚える
私が掴んでいた事で随分とはだけた浴衣から厚い胸板や美しい腹筋が覗く中彼は徐に帯を解くと只の布に成った浴衣を脱ぎ払い隣の布団へ放ってしまった
目の前で下衣一枚に成った彼はその想像よりも逞しい肌を露出し普段の淡白な瞳の印象は何処へ消えたのか妖艶な瞳で私の帯に手を掛けた
「っ………!!!」
羞恥が一気に込み上げて抵抗する腕は簡単に捕まえられ私の浴衣は彼の手により直ぐに開いてしまった
途端に外気に触れた肌は彼と同じで下衣だけを残し迫った彼の髪の毛が胸元を流れる
彼の呼吸を感じて極度の緊張から強張る身体
「力抜いて」
普段よりも低く掠れた声は余計に私の心音を早め
瞬間谷間に触れた柔らかな唇の感覚に肩が震える
静かな部屋に彼が発するリップ音が響いてゾクゾクと沸き上がる快楽にも似た感覚に最早抵抗の意思は無く解放された腕は彼にすがり付く
素肌と素肌が触れ合いしっとり重なる感覚に自身が汗を浮かべているのだと気付いた
決して下衣には手を掛けず只肌を伝う彼の舌はもどかしく身体が疼き熱を上げる
「………っ……イル……ミさん……」
やっと紡いだ言葉は甘い吐息を混じらせ
「沙夜子」
彼の声には熱が籠っていた
時折チクリと走る甘い痛みは私の肌に薄紅色の花を咲かせ蘇るシャワールームでの記憶がまた私を淫靡な世界へ誘った