第148章 北国最後の夜
ホテルに併設された駐車場には次々観光バスが停まり宿泊客が吸い込まれる様にホテルに入る様子を部屋の窓から眺める
一度部屋を訪れた私達だが部屋を見渡しキャリーバッグを置いた後に直ぐ部屋を出た
何故なら夕方近い16時から観光があるのだ
目的地はこのツアーの目玉と言って良い、函館山から眺める夜景である
バスに揺られながらも楽しみで仕方がない私はソワソワと身体を揺らす
「どうしたの」
「夜景……楽しみで」
そんな私の様子を眺めていた彼は特段興味が無いのか ふーん と間の抜けた声を上げた
バスに揺られた次はロープウェイ
彼は瞳を輝かせたが期待とは裏腹にぎゅうぎゅう詰めで外を眺める余裕等無く、更には愛しい彼に他人が触れる事に激しい嫉妬心を駆り立てた
ロープウェイを降りて15分間の自由時間があり、まだ明るい展望台に出てみる事にしたのだが
私の頭の中は先程の光景で一杯で自分はなんて子供染みているんだろう……なんて思うと嫌に成った
彼は勿論私の恋人では無いし独占する権利なんて私には無い
しかし故意では無いにしろ彼に他の誰かがベッタリくっ付くなんて気持ちの良いものでは無かった
「特徴的な地形だね」
遠く下界を眺める彼のコートを軽く払ってみる
そんな事をして何が変わる訳でも無いがなんとなく気休めにはなる
「……沙夜子?」
「……はい!」
「………どうしたの」
「別に………」
「………ふーん。」
彼の屈強な肉体に触れられるのが世界中で自分だけにならないかな……なんて言える筈が無く
チラリと私に視線を向けた彼だが何も聞いては来なかった
ツアーの旗のもとに集まって夕焼けが沈むのを見届けた後、まだ薄明かるさを残した辺りに光の街が浮かび上がった
世界三大夜景にも数えられる函館の夜景は雪景色に沢山の街灯りとイルミネーションが反射して鮮やかな眺望を見せた
途端に沸き立つ歓声に漏れず私も歓声を上げた一人だった
「イルミさんイルミさん!めっちゃ綺麗ですね!」
「これは綺麗だね。」
今まで見たどの夜景よりも美しく街灯やネオン、雪の反射が織り成す神秘的な輝きはその場にいる人々を虜にした
「イルミさんと見れて私幸せです!」
笑顔で見上げた先
彼の唇が動いた