第148章 北国最後の夜
………しかし……ひとつ丸々食べ切る自信は無いのだ
呟いた後に押し黙った私の代わりにコロッケとソフトクリームを頼んでしまった彼の手前食べたいという欲求を優先してキャンセルはしなかった
コロッケを半分に割ってくれた彼は当然の様に片方を私に手渡すのだが右手にソフトクリーム、左手にコロッケを持った私はさぞ食い意地が張って見えるだろう
その証拠に彼は私を眺めると鼻で笑った
みるみる体温が上がる中先に熱々のコロッケを噛る
ホクホクジャガイモとクリーミーな風味、スパイスの効いた挽き肉が全体をまとめていて美味しくてサクサクと音を経てながらあっという間に平らげてしまった
残るは右手のソフトクリームだがやはりひとりでは食べられる気がしなかった
「イルミさん………」
「ん?」
テーブルにて向かい合った私達、コロッケを食べ終わると彼は何をするでも無く頬杖を付いてじっと私を見詰めている
「あの……ソフトクリーム半分こしません……?」
「……良いよ。」
「!ありがとうございます」
正直予想外だった。
スプーンも付いていないソフトクリーム
必然的に噛ったり舐めたりと几帳面な彼には受け付けない類いだと思っていたのだが
………そもそもそこまで考えずに了承したのかもしれない
私はお手本を見せる気持ちで少し溶け始めたソフトクリームをペロリと舐めてみた
「…………。」
「…………。」
チラリと様子を伺えばすっと細められた視線は真っ直ぐに此方を見ていた
…………やはり不衛生に感じただろうか………
全て食べきる方向へ思考を持って行く
彼が購入してくれた事も相まって途中で捨ててしまうなんて出来ない
私の体温が徐々に伝わっているのか次々溶け出すソフトクリームを懸命に舌で掬い上げつつも彼の真っ直ぐな視線が刺さる
チラリと彼を見てみれば彼は何処か不適な瞳を向けていて途端に心音は速度を上げた
やはり……はしたなかっただろうか……只ソフトクリームを食べているだけなのにあの色香を漂わせる表情は何だろう……
なんて考えてはたと真相めいた事にたどり着く
ペロペロと舐め上げる仕草はもしかしたならば卑猥な仕草に見えてしまうのでは……と