第148章 北国最後の夜
随分町外れを走る車窓からは新たに積もった新雪が目に眩しく雪にも負けない彼の美しい肌と黒髪のコントラストが綺麗で思わず溜め息を付けば
「酔った?代わろうか」
彼が即座に反応を見せるので首を振ると「そう。」と言ってまた窓の外を眺め始めた
私の些細な反応に気付いて気遣ってくれる彼は優しい
窓の外に夢中な様でいて実はしっかりとアンテナを張っている
小さな溜息にも気が付けばガイドさんの話しもしっかりと聞いている
バスに乗っている時は勿論だが基本的に外出先で彼は気を張っているのだ
疲れないのかと心配にもなるがその分彼は私と二人きりになると緊張を解く
その姿を私だけが知っていると思うと凛々しい今の彼もびっくりする程素敵だが寝起きの間の抜けた表情を思い浮かべて愛しく思った
そうこうしている内に到着したのは函館牛乳工場
30分間の自由行動という事で牛乳がパックに詰まる迄の過程をガラス越しに見学したのだが特段興味が無かったのか早足の彼を追う内に見学は1分と経たずに終了していた
「………。」
「………。」
不意に目が合いどちらとも無く工場に隣接しているお土産屋さんの扉を開く
小ぢんまりとした店内には牛柄のカップなんかが売っていたりショーケースにはアイスクリームや先程見た牛乳が売り出されている
そしてコロッケなんかのちょっとした食べ物も食べられるらしくテーブルが三組程用意されていた
店の外をはためく暖簾旗にはミルクコロッケと書かれており
ガイドさんもミルクコロッケが名物だと話していたのでひとつ購入してみる事にしたのだが私の後ろ髪を引く品はまだあった
「ソフトクリーム……」
せっかく北海道の牛乳工場にいるのだからソフトクリームを食べない手は無いと思う