第148章 北国最後の夜
12月23日
目覚めた途端から胸が騒ぎ出す
「おはよう」
「………お、おはようございます……」
昨夜は2つ並んだベッドで其々眠りに付いた筈だったのだが瞼を開くと彼は私のベッドに腰掛けていた
しかも長い指先は私の髪を遊び
優しい眼差しで私を眺めていたのだ
つまり私が目覚める迄の間彼は間抜けな寝顔を見ていたという事に成る
……………何故……という疑問の前に気恥ずかしさが込み上げて掛け布団を鼻元迄持ち上げれば彼は双眼を細めて長く伸びた睫毛が影を落とした
「っ……イルミさん……私に何か……」
「別に。見ていただけだけど……起きなくて時間は平気?」
言いながら私の髪をとかした彼の指先は掛け布団に引っ掛けられてやわやわと布団を首元迄引き下げられ私の口元は簡単に外気に晒される
「あ、起きます……」
そのままの状態で私を眺める彼の視線に耐え切れず起き上がれば何故か布団からふんわり彼の香りがした気がした
其れが何故なのか歯を磨きながら考える……
もしかしたなら……私のベッドに彼が……?
なんて……そんな事は私の妄想だろう……
うん。そうに違いない………。
_________"
昨夜の夕食も満足な物だったのだが今朝の朝食も豪華な物だった
熱々の揚げたてワカサギ天ぷらは絶品で私の食べっぷりはそれはそれは良い物だっただろう
彼は黙々と食べていたがワカサギの天ぷらが気に入った様だった
そして今日もバスに揺られる
比較的前の席だった事もあり今日は窓際を彼に譲ったのだが
(…………絶景やわ………)
窓の外を流れる景色、そして其れを眺める彼の横顔を一挙に眺められる………至福………!