第147章 彼との時間
………しかしこのツアー、これだけでは無い
一時ホテルで解散したツアー一行だったが19時………すっかり暗くなった頃に再びバスに揺られる
到着したのは元町のイルミネーション
北海道以外で望む事の出来ない坂道の街路樹には沢山の電球が飾られてキラキラと幻想的な景色を浮かび上がらせていた
バスから降りて眺められる時間は15分
私はこの時を楽しみにしていた
彼の手を引っ張ってバスから降りれば小高い丘の上に冷たく冷えきった風が吹きガラス越しとは比べ物にならない光の輝きが目に飛び込む
「わぁ……綺麗……」
ずっと坂の下迄続く民家の灯りは温かく長く飾られたイルミネーションは海までの道筋を照らして伸びていた
私が思わず漏らした声は空の黒に登り辺りの喧騒にかき消える
しかし直ぐ隣で立っていた彼は
「うん。綺麗だね」
私の声を拾ってしっかりと答えてくれた
イルミネーションに照された彼が此方を向くので私も彼を見上げれば彼は私に手を伸ばした
驚きの余り目を見開いた私は彼の香りに包まれて時間を忘れる
先程迄近くに聞こえていた筈の喧騒も消えて感じるのは私を包み込む愛しい彼の力強い腕の温もりだけだった
その行動は辺りから眺めれば一瞬だったのかもしれない
しかし私には長い長い永遠の時の様に思えた
解放された後に集合場所を気にしてさっと背中を向けた彼に出た言葉は只彼の名だった
「………イルミさん!」
叫べば、余裕を漂わせて振り向いた彼は
「………沙夜子、行くよ」
目が眩む程の美しさと妖艶さを湛えて笑ったのだった