第147章 彼との時間
私達はその後ツアーの皆様お揃いの昼食を食べた
移動も観光もずっと一緒という事も影響してか彼への視線は随分と減り
お土産屋さん二階の食堂の様な場所での食事は落ち着いたものだった
せかせかと急いで朝食を食べた私達にとって有難い雰囲気の中出されたのは牛乳鍋とミニイクラ丼
蓋を開けばもくもくと湯気を上げる鍋
………牛乳鍋とは………
「…………。」
「…………。」
未知の物に対峙する彼を見詰めつつ実は私も初めて食べる物だった
鍋の類いは好きな様子の彼だがきっと同じ部分で引っ掛かりを感じているのだろう………
………牛乳と鍋は果たして合うのか………
過去を振り返れば豆乳鍋なら食べた事があったが豆乳は元は豆なので牛乳とはまた別物な気がした
しかし目の前の鍋は良い香りを漂わせており自然と胃袋が鳴る
先に箸を伸ばしたのは私だった
彼はじっと様子を伺っていて
湯気の上がる鶏肉を一口で含んだ
「………美味しい!」
咥内に広がったのは濃厚なクリーミーさと実にまろやかな風味だった
先程迄牛乳と鍋は合わない……なんて思い込んでいた自分を馬鹿に思う………家でも食べたい。
かぼちゃやじゃがいもなんかのゴロゴロ野菜も実にマッチしていて次々食べ進める私につられて彼も箸を伸ばした
「………どうですか?」
なんて聞いておきながらもその表情で解っている
「……美味しい。」
大きな瞳を輝かせて呟いた彼に笑みを溢す
ミニイクラ丼も一粒一粒が大きく艶めき噛めば旨味が弾けて絶品だった
ミニじゃなくて普通のどんぶりで良いのに………なんて食い意地が張った事を考えながらも大満足の昼食を終えて
「悪くなかった」
との上から目線な彼のコメントに牛乳鍋が気に入ったのだなとほっこりしたりした
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次いでバスに揺られてやって来たのは五稜郭公園
北方防備の為に造られた日本初のフランス築城方式の星型要塞で国の特別史跡に指定されている公園だ