第146章 雪山と彼の腕
私はどうにか気分を変えようと彼にプレゼントされた真新しい手袋をはめて彼に近付く
「イルミさん!手袋似合いますか!」
私の呼び掛けに真っ直ぐ視線を向けた彼は漂わせていた圧力を緩めた
「うん。似合ってる」
「イルミさんもマフラー似合ってます!」
「うん。」
手袋効果は絶大だった
彼の不機嫌は一瞬にして消え去り途端に和やかな空気が流れ始める
「私今回の旅行めっちゃ楽しみやったんです!今日もいっぱい楽しみましょう!」
「そうだね。」
笑顔で発した言葉は本心に違い無いが彼の不機嫌を今以上にさせない為にわざと伝えた台詞だった
見上げた私に向かって僅かながら表情を緩めた彼に笑顔を向ける頃にはすっかり二人の空気感が広がっていて
バスに乗り込んでからも私達は楽しく会話を交わす事が出来た
いつから降り出したのか朝には新雪が積もっていたホテルから暫く走ったバスの車窓には昨日よりも雪深い光景が広がっている
ガイドさんによると此の辺りでは野生のキツネも見る事が出来るそうで私達は結露で曇った窓を時折拭きながらその姿を探したりした
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最初に到着したのは洞爺湖を望める展望台
真っ白な山々に囲まれた湖だけが静かに広がる其所はお土産屋さんも何も無い自然のど真ん中だった