第146章 雪山と彼の腕
「ほら、朝ごはん迄に用意しないと!」
寝惚け眼をそのままに此方を向いて動こうとしない彼に言えばコクリと頷く仕草が可愛くてニヤニヤしてしまう
しかしニヤニヤしている内にも時間は迫るのだ
慌ただしく身支度を整える私がもう少しで仕上げという頃に布団から出た彼だがすっかり身支度を整えた後も暫くぼんやりしていた
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朝食も昨夜同様慌ただしいものだった
とにかく宿泊客が多いのと彼の存在が人目を惹くのとで気は休まらず私達は気が付く頃にはあっという間にロビーの集合場所に立っていた
腕組みをしてまんじりともせず柱に凭れ掛かった彼は人を寄せ付けない雰囲気を醸し出している
というのも今迄私達はツアー旅行に出た事は無く今回が彼にとって人生初のツアー旅行になる
ツアーなのだから当然集団行動なので観光時間も決まっていれば食事時間も決まっているのだが
彼はどうも其れが気に食わないらしく少々不機嫌なのだ
夕食時から引き続き朝食をゆっくり堪能出来なかった事も原因のひとつかもしれない
今迄ならばフリープランだった為にツアー客とかち合わなかったので人目はあってもここまで慌ただしい事は無かったのだ
「お願いですから人に聞こえるように愚痴言わないでください」との私の願いは叶ったものの
その結果ムッツリ黙ったまま無言の圧力を発する今に至っている
………これはこれで困る………
せっかく旅行に来ているのに彼は明らかに不機嫌で
私は周りの様子ばかり気にして彼の顔色を伺うなんて全然楽しくない