第145章 ひとつの布団
繋がれた大きな手は温かく胸は彼との触れ合いに騒ぐのにその一方で逃げ出したいくらいに痛くて、わざと大きく手を揺らし歩いた
ぼんやりしている内に私達は部屋に戻って来て
私達が出ている内に敷かれた布団は2つ並んでいるものの家で眠るより少し距離があった
カサリと音を経てて袋を置いた彼はチラリと布団を見遣ったが何も言わなかった
………何か言われた所で反応に困るのだが……なんて考えていると
「先に風呂にする?」
彼は座椅子に腰掛ける事無く言った
確かに先に入浴を済ませた方がゆっくりと寛げる気がして
「……そうですね!今やったら大浴場空いてそうやし!」
「俺は部屋で入る」
「え!」
「入浴中までじろじろ見られるなんて煩わしい。」
「………そうですね。じゃあ私は大浴場行ってきます!鍵開けてくれます?」
「うん。」
私としては二人で大浴場に出向くとばかり思っていたので肩透かしだったが
彼の主張は最もだ。
今日は朝から1日中注目の的だったのだから入浴くらいゆっくりと済ませたいだろうと思った
入浴準備一式を持って部屋を後にしようとすると彼に呼び止められて振り返る
しかし彼は只無表情にじっと私を見ていて
「…………?なんでしょうか……?」
目的が解らず戸惑いの声を上げると
「別に。行ってらっしゃい」
と手を振られた
彼の意図は全く不明だが可愛いので良しとした
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大浴場はホテルの最上階にありロッカーの空き具合から察するに予想とは反して人が多い様だった
この分なら彼は部屋で良かったと心底思う
今頃彼はもう入浴中だろうか……なんて考えながらも脳内をピンクに染めぬ様に大浴場へ足を踏み入れる