第145章 ひとつの布団
「街で見掛けない木だね」
「そうですね!木も雪も白くて綺麗ですね」
「そうだね」
しゃがみ込んで景色を眺める彼の隣に私もしゃがみ真っ白な雪に触れてみる
滅多に降る事は無いが住む街に稀に降る雪とは違いサラサラの雪は気持ちの良い手触りだった
「サラサラですよ!……そういえば北海道の雪はパウダースノーっていう雪質?らしくて本州の雪とは違うんですって!」
「ふーん。」
私の言葉に興味無さ気に呟いた彼だったがその手は雪に触れていて冷たい指先とは裏腹に心はポカポカと温かくなった
「イルミさん!雪だるま作りませんか!」
「良いよ」
私達は各々雪だるまを作った
フワサラの雪は思いの外固めるのが大変だったが彼の握力に掛かれば雪の玉は直ぐに出来て、しらかばの木の傍に2つ並べて写真を撮った
「なんか楽しいですね!」
「そうだね」
澄んだ風がチラチラと雪を降らせ始める中
私達は他愛なくて温かい会話を交わし続けた
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バスは予定通りホテルに到着し、夕飯の時間を伝えられて私達は部屋で寛いでいた
部屋の窓からはホテルの裏側に広がる大きな湖を望めて、何だか贅沢な気分に成る
部屋を振り返ればダッフルコートを壁掛けハンガーに掛けて此方を向いた彼と目が合った
「何か見える?」
彼はゆっくりと歩みを進めると私に並び窓を眺めた
湖を眺め遠く落ちる視線は美しく愁いを帯びた横顔は手の届かない人の様に思えて
「夕飯まで時間あるし、散歩しません?」
静まりかえった部屋には不釣り合いな元気過ぎる声を上げた
途端に交わる視線
真っ黒で大きな両眼に私だけが閉じ込められていて
「良いよ。」
単調な声に笑みを溢した