第144章 彼と私のツアー旅行
「私ウニ丼」
「俺カニ丼」
真顔で向き合った私達は語らずとも通じ合っていて私がニッコリ微笑めば彼はふぅと息を吐き「仕方ないね」なんて表情を浮かべた
暫くしてテーブルに運ばれて来たウニ丼とカニ丼はやはり海鮮の宝庫北海道だけあり艶々で色味が違う
「いただきます!」
「いただきます」
一口含めば濃厚なウニのクリーミーさは変な臭みが無く新鮮なのだと感動する
ホカホカと湯気を上げる白米に絶妙にマッチして三口、四口と放り込んだ後に至福の溜息が漏れた
「……やっばい。めっちゃ美味しい……」
「美味しいね」
「カニも美味しいですか!」
「うん。………ほら」
言いながら箸とどんぶり鉢を手渡され咄嗟に受け取る
…………彼の使用済み割り箸………なんて滅茶苦茶意識しながらも一口食べてみると途端にカニの風味が広がった
きゅっと引き締まった身からカニ特有の甘味が溢れ此方もまた旨味の詰まった一品だった
「美味しいです!!!」
「でしょ。」
次いで私もウニ丼を彼に手渡したのだが彼は僅かに眉を反応させて固まってしまった
「……?美味しいですよ!」
「ウニ苦手」
彼の言葉から以前回転寿司でウニを食べた際に苦手だと言っていた事を思い出す
じっとどんぶり鉢を眺める彼はあの日の味を思い出したのか何処と無く怪訝な表情に見えた