第144章 彼と私のツアー旅行
私達ははこだて明◯館に入館するとランプやグラス等のガラス細工がズラリと並んだ店に入った
暖かい色の照明に照らされて色とりどりのガラスが輝く店内は見て回るだけでも楽しい気持ちに成る
可愛い小物やグラスが並ぶ中、牛乳瓶の様な形をした花瓶が目に付いた
「可愛い……!」
思わず手にした花瓶
隣に立ち止まった彼は腰を折ってまじまじ眺めると
「可愛い?これが?」
心底解らないといった風に呟いた
レトロな形状に「MILK」と刻印された花瓶は私にしてみれば可愛い雑貨品なのだが彼にとっては只の瓶らしい
「可愛いですよー!ほら、ミルク!」
ずいっと彼の目の前に突き出して見るが
「………沙夜子の趣味が解らない」
彼は全く表情を崩さずに無表情に声を漏らした
「えー。これめっちゃ気に入ったから買います!」
「ふーん。」
独断興味無さ気に呟いた彼だが私の手から花瓶を取り上げると
「他は見ないの?」
言いながら店内を見渡す
「あの、自分で買いますから!」
「これくらいプレゼントするよ。」
「でも!」
「良いから。」
有無を言わせない声色で言った彼は颯爽とレジ迄足を進め、私はそんな彼の背中をぼんやり眺める事しか出来なかった
(………紳士的過ぎる……………)
彼の所作は何でも然り気無く優雅に見える
私の手から花瓶を取り上げる仕草すらも自然で嫌味が無いのだ
その上彼にとっては只の瓶に見えたらしい花瓶を私が可愛いと言った事でプレゼントすると言ってくれた
彼は本当に紳士的だ
こんな事をされてしまえばチョロい私は簡単に心臓を射抜かれる訳で、レジからゆっくりと此方に歩み寄った彼と目を合わせる事が出来なかった