第140章 手のひら返しの虫歯
その結果帰宅する迄の間永遠に菌類の事を話す彼の言葉へ私はぼんやりした返事しか返さなかったに違いない
帰宅して鏡を覗くと右半分の頬が大きく腫れ上がり悲惨な風貌に成っていた
痛みに耐えるという事は体力を消耗する
私は素早く身支度を整えて彼よりも早く布団に入った
深夜に歯医者は開いていないし明日迄耐え忍ぶしか手段は無い
当日欠勤に成ってしまうがコールセンターは休む腹積もりで後は眠ってしまえば痛みを感じない……なんて思っていたのだが
…………私の考えが甘かった……
何もせず睡魔を待つ今の状況は何もしていない分痛みを意識してしまいアルバイト中よりも痛みが強烈に成ったかの様に感じる
実際痛みは着々と大きく成っている
只布団にじっとしていると痛みでどうにか成ってしまいそうで私は堪らず上体を起こす
ドクドクと脈打つ様に痛む虫歯の影響から首筋や肩迄痛みを引き起こし、今や頭痛もセットに成っている
「………痛い……」
「…………」
涙が出そうな程痛い。
此方に視線を向けた彼はそんな私に
「キッチリ歯磨きしているのにね。それでも虫歯になりやすいなりにくいってあるんだよ。俺はならない。……沙夜子は不憫だね」
なんて単調に言い放った
痛みを必死に耐えている私に何故不憫等と……
そもそも今言うべき事だろうか……
ズキズキ痛む歯や頭………彼の言葉
私を襲う耐え難い痛みにじっとしている事すら苦痛に感じ、私は遂に泣き出してしまった
「!?」
彼は私が泣き出した事に酷く驚いた様子で固まっていて私はそんな彼を見ながらシクシクと涙を流す
どうしようもなく痛い………
「………どうしたの」
単調ながら普段よりおずおずとした声色で言った彼
「……痛いです……痛すぎます……もう無理………」
とにかく辛い旨を伝えた